本文へ移動
知恵の一覧へ
経営/経済/持続性マネジメント原則・概念

経営者の基本態度・フォーム

しかし厳密に言えば、この状態は成立しない。 お金は常に何かを得るための手段であり、目的ではないからである。

この知恵で考えられること

しかし厳密に言えば、この状態は成立しない。 お金は常に何かを得るための手段であり、目的ではないからである。

この記事では、経営判断を行う際の基本的な思考のフォームを整理する。

1. 「お金が必要」という状態は存在しない

経営の議論でよく登場する言葉に「お金が必要」というものがある。

しかし厳密に言えば、この状態は成立しない。 お金は常に何かを得るための手段であり、目的ではないからである。

つまり、本来の問いはこうなる。

  • 何を得たいのか
  • どの状態を作りたいのか
  • それはいつ必要なのか

例えば

  • 生活の安定
  • 事業に使う時間
  • 将来のリスクへの備え
  • 特定の投資機会

などが目的であり、その結果として資金が必要になる。 ここで「お金が必要」という整理から始めてしまうと、ある重要な視点が失われる。

それは「**そもそもそのお金の必要性は減らせないのか」**という視点である。

例えば

  • 支出を減らす
  • タイミングを後ろにずらす
  • 別の方法で代替する
  • 自分たちで解決する

といった可能性があるにも関わらず、「お金が必要」という整理から始めると、経営判断は必然的にお金を得るための行動に向かってしまう。

これは経営としては粗い整理である。

2. 経営判断は時間軸がなければ成立しない

経営判断においてもう一つ重要なのが時間軸である。

同じ資源でも、必要なタイミングによってコストは大きく変わる。

例えば

  • 1年後に100万円必要
  • 明日100万円必要

この2つは同じ金額でも、必要なコストは全く違う。

なぜなら、この世界では「**資源は緊急性が高いほど高値がつく」**からである。 最もわかりやすい例が借入である。

例えば

  • 今お金がない
  • すぐ必要

この場合、「お金を貸す代わりに利息を払う」という取引が成立する。 これは「**時間を短縮するためのコスト」**である。

同じ構造は、お金以外にも当てはまる。

例えば

  • 人材
  • 他人の時間
  • 組織のリソース

なども同様である。

例えば

  • 今日エンジニアが必要
  • 1年以内に1週間必要

では交渉もコストも全く変わる。

つまり経営では「獲得したい資源と時間軸は必ずセットで考える」という必要がある。

時間軸がない状態で手段を考えると、人は簡単によくわからない行動に走る。


3. 経営判断の基本順序

経営判断の基本的な順序は次の通りである。

① 状態の評価
② 必要な状態の定義
③ 手段の選択

この3つは必ずしも一方向ではなく、行き来することもある。

しかし重要なのは、

突然舞い込んだ手段や機会に対してYES/NOを判断することから始めない

ということである。

例えば

  • 仕事の提案
  • 投資機会
  • 新しい事業
  • パートナー

などが突然現れたとき、それを起点に「やるかやらないか」を考えるのは、

**「野性的な判断」であって、「経営的な判断」ではない。 **バーゲンで着もしない服が貯まるおばちゃんと同じ水準。

経営とは

  • 今の状態を把握し
  • 目指す状態を決め
  • それに対する手段を評価する

という順序で行う。

この順序を守るだけで、多くの判断は整理される。


4. よくある経営ミス

“二段階仮説”

経営者や起業家がよくやる思考ミスの原因に二段階仮説がある。

例えば次のような構造である。

マーケティングをすれば事業は伸びる
↓
マーケティングにはお金が必要
↓
お金があれば成功する

この思考では最初の仮説が検証されていない。

疑うべきなのは

「マーケティングをすれば伸びるのか」

という部分である。

しかし人は

  • お金を得る
  • 人を雇う
  • 投資をする

といった行動になると、起業家がみんなやる行動だと思って疑わずに必死になりやすい。 結果として問題設定が間違ったまま努力する。

実際には

  • ワークフローの改善でもいいね。
  • 知り合いや既存顧客への深い提案でもいいね。
  • 関係性の活用で賄えるね。

という迅速でリーンな手段を見失う。

つまり「**経営っぽい行動をすること」**が目的化してしまうことがある。

これは「**経営ごっこ」**である。それをしたいならそれをすればいい。


5. 必要性をなくすという経営

経営において最も強い戦略の一つは何かの必要性そのものをなくすことである。

本来、経営の理想は

  • 健康
  • 楽しい状態
  • 持続可能な生活

が維持されることである。

そこが満たされていれば、必ずしも追加の資源を得る必要はない。

つまり「必要なものを得られる経営」は実は第二段階の経営である。 第一段階であり理想の経営は「そもそも必要にならない状態を作る」である。

例えば

  • 支出の見直し
  • ワークフローの改善
  • 自分の能力の活用
  • 既存資源の最大活用

などである。

経営が上手な人は、自分という資源を最大限活用することに長けている。

自分は基本的に無料で使える資源だからである。

そして

  • スピードが足りない
  • 能力が足りない
  • 時間が足りない

という部分だけを外部資源で補う。

「そんなこといってちんたらするのが経営?」

と言いたくなるのもわかる。

着実な勉強としてはグロース論と経営論は意図的に分けて考えた方がいい。

急速に走る・伸びるというのは経営の話ではなくハイグロースを目指す場合の戦略論は分けて扱うべきである。

全体経営を見ている人間は、ハイグロースな戦略からくる要件も含めて全体の健康や持続を考える状態である。


6. 経営は特殊な技術ではない

経営には

  • ファイナンス
  • 組織設計
  • 戦略論

など多くの専門用語や理論が存在する。

会社という組織は要素が複雑になるため、それを整理するための

  • 抽象化
  • モデル
  • 専門用語

が発達している。

しかしここで注意すべきことがある。 経営そのものは、決して特別なものではない。

例えば、

  • 親は家族を経営している
  • 個人は自分というリソースを経営している

日々

  • 何に時間を使うか
  • どこにお金を使うか
  • 誰と関係を作るか
  • どんな未来を選ぶか

という意思決定を行いながら、人は生きている。 これはすべて経り営みを運営する行為であり、それ自体が経営である。

つまり経営とは、自分や関係するものの現在と未来を、より良い状態に保つための判断の連続である。

経営を「知らないもの」にしてしまう問題

ここでよく起こる問題がある。

経営を自分の生活とは切り離された専門領域として扱ってしまうことである。

例えば

  • 経営は難しいもの
  • MBAが必要
  • 専門家だけが扱えるもの

という認識である。

この認識を持った瞬間、人は経営を自分とは関係ない未知の世界として扱い始める。 しかしその状態の時点で経営を身につけることはほぼ不可能になる。

なぜなら、自分が日常的に行っている判断と接続されていない知識は、行動に変換されないからである。

勉強コンテンツとしての経営

経営の勉強にはもう一つの落とし穴がある。

難しい言葉や新しい概念を学ぶと、人は強い高揚を感じる。

例えば

  • ファイナンス用語
  • 組織論
  • 戦略フレームワーク

などを学ぶと、経営をしている感覚が生まれる。

しかしこれは多くの場合、問題解決ではなく知識の獲得と消費のエンタメである。

もしその知識が

  • 自分の生活を良くする
  • 仲間を助ける
  • 現実の問題を解く

という行動に接続されていないなら、それは単に勉強コンテンツを楽しんでいる状態に過ぎない。

その状態では、

  • 新しく覚えた言葉を使いたくなる
  • 新しい手法を試したくなる

という欲求が先行する。

つまり手段が目的化するのである。ダサい。

学習の態度と実行の態度は違う

ここで重要なのは、

学習の態度と経営の実行の態度を分けることである。

学習する時には、

  • 自分は知らない
  • ゼロから理解する

という態度は重要である。

しかし経営を実行する時には、

  • 自分の生活
  • 自分の関係
  • 自分の資源

と接続していなければ意味がない。

つまり

経営とは
知らない知識を覚えることではなく
自分の営みをより良く運営すること

である。


経営を身につける人の共通点

経営ができるようになる人は、難しい理論を覚えた人ではない。

むしろ

  • 自分の生活
  • 自分の関係
  • 自分の資源

と経営の概念がつながった人である。

その瞬間、人は初めて経営ができる状態になる。 逆に言えば、経営を遠い専門領域として扱っている限り、それはずっと勉強コンテンツのままで終わる。


結論

経営判断の基本は極めてシンプルである。

① 状態を正しく見る
② 目指す状態を決める
③ 手段を選ぶ

そして常に問い続ける。

  • 本当にそれは必要か
  • 時間軸はどうか
  • 別の方法はないか
  • そもそも必要性を減らせないか

この態度を持つだけで、

多くの経営判断は

自然と整理されていく。