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他者が「見える」状態を手伝う手順

たとえば相手が「自由な場をつくりたい」と言ったとき、その言葉だけでは、まだ対象が定まっていない。

この知恵で考えられること

たとえば相手が「自由な場をつくりたい」と言ったとき、その言葉だけでは、まだ対象が定まっていない。

1.コンサルタント側で持っておくべき着眼点

「何を言っているか」と同時に、「何を指して言っているか」を見る

たとえば相手が「自由な場をつくりたい」と言ったとき、その言葉だけでは、まだ対象が定まっていない。

選択肢が多いことを指しているのか。許可を求めなくてよいことなのか。失敗を評価されないことなのか。参加しなくてもその場にいられることなのか。

ここで、こちらが知っている「自由」の概念に回収しない。

まず持つ問いは、

「この人が『自由』と言うとき、具体的にはどの場面の、誰の、何がどうなっているところを見ているんだろう?」

になる。

言葉は、意味の確定した情報として受け取るだけでなく、まだ特定されていない場面への指示として受け取る。

だから、最初から「自由とは何ですか?」と定義を求めるより、「それに近かった場面はありますか?」と聞く。

「よい/違う」の対象は、提示した全体とは限らない

企画の説明に「それ!」と反応しても、本人が反応したのは企画全体ではなく、ある一瞬の人の動きかもしれない。

あるいは、内容ではなく「初めて自分の話が伝わった」という、この対話自体への喜びかもしれない。

そこで、頭の中では常に、

「今の反応は、何に対する反応か。どこまでの範囲にかかっているか?」

を保留しておく。

反応の強さと、反応が指す範囲を分ける。

強い反応が出たら全部採用するのではなく、むしろそこで解像度を上げる。

構想を、いったん「実際に起きるもの」として動かしてみる

相手の構想を理解するとき、理念や構造として納得するだけではなく、コンサルタント側で一度、具体的な状況として展開してみる。

その場には誰が来るのか。何を知っていて、何を知らないのか。何に接して、何をするのか。その行為を誰が受け取り、次に何が起きるのか。時間、費用、責任は誰に生じるのか。

ここで大事なのは、自分のセンスで構想をよくする前に、相手が置いた前提を引き受けて、その帰結を追うこと。

頭の中で場面を進められなくなるところは、問いを置く候補になる。

「この人がそれを見たあと、次の行動に移るきっかけは何だろう?」

「ここで誰かが引き受けることになっているけれど、その人には何が伝わっているんだろう?」

ただし、そこで止まるのは相手の構想の欠陥とは限らない。こちらの理解や知識が不足している可能性も残しておく。

説明が滑らかなところより、「区別がまだされていないところ」を探す

このモデルでは、「自然に」「なんとなく」「ちゃんと」「気づいたら」「そこが大事」などを、掘る場所の候補として扱う。

それ自体が悪い言葉なのではない。一つの言葉の中に、複数の出来事や判断が圧縮されている可能性があるから。

「その『自然に』のところだけ、少しゆっくり追ってもいいですか?」

「『ちゃんと伝わった』とわかったのは、相手が何をしたときでした?」

話し方が変わったり、言い直したりしたところも候補にする。ただし「今、声が変わったから本音だ」とは判定しない。

「今、『嬉しい』から『ほっとした』に言い直しましたね。その二つは、ここでは何が違いますか?」

観察した変化を返し、意味は本人に確かめる。


2.最初の掘り方――説明から、本人が確かめられる場面へ戻す

過去の話は、「一般的な傾向」から「一回の出来事」へ

相手が、

「私は、人が自分から動き始めるのが好きなんですよね」

と答えたら、すぐに価値観の分析へ進まない。

「それを感じた出来事を、一つ挙げるとしたら?」

「その人が動き出す、少し前から教えてもらえますか?」

まず、一回の出来事を共有する。

具体的な一場面に戻り、理由の説明より経験の進み方を聞くという方法には、ミクロ現象学的インタビューの蓄積がある。そこでの「どのように」は、本人に理由を推測させるのではなく、経験を記述してもらうための問いとして区別されている。Springer

この考え方を今回の実践に使うなら、いきなり深く掘らず、まず場面の骨格をつくる。

直前の状態 → 接した出来事 → 本人が受け取ったこと → 行動 → 相手や環境の応答 → その後

これは全項目を尋問するためのチェックリストではなく、こちらが「どこがまだ見えていないか」を把握するための骨格。

たとえば「相手が動き出して嬉しかった」という話なら、

「相手は、何を見て動き出しましたか?」

「あなたは、その人が動き出すまで何をしていましたか?」

「嬉しいと感じたのは、動き出した瞬間ですか。その後に何か起きたときですか?」

と、一つずつ確かめる。

「なぜ」を禁止するのではなく、聞く順序を変える

理由や価値観も、もちろん知りたい。ただ、その前に、理由がかかっている対象を特定する。

「なぜそれがよかったんですか?」だけではなく、

「いまの一連の中で、よかったのはどの部分でした?」

「そこでは、何が起きたと感じました?」

「それが、あなたにとってどう大事だったんでしょう?」

という順序にする。

場面の特定 → 反応した部分の特定 → その意味。

最初から意味だけを聞くのではなく、意味を確かめる足場をつくる。

思い出せないところを、こちらの想像で埋めない

過去を扱うときには、本人の回想、今の解釈、こちらが置いた仮説を分けておく。

「それは、そのとき実際に思ったことですか。それとも、今振り返るとそう説明できる、という感じですか?」

「その部分は覚えていなければ、空けたままで大丈夫です」

一方、構想を扱うときには、積極的に仮定を置いてよい。

「ここから先は、実際に起きた話ではなく、仮にこうなったら、という場面を置いてみます」

過去を確かめるモードと、未来をつくって試すモードを混ぜない。

これは、この方法の精度を保つための重要な区別になると思う。


3.場への落とし方――「よい提案」より、「判別できる具体」を置く

あなたの話で特徴的なのは、質問だけで全部を引き出すのではなく、こちらが具体を生成して、本人の認識が働く対象を用意することだと思う。

デザイン研究にも、見る、手を加える、その結果を再び見るという往復や、働きかけによって意図していなかった帰結を発見するという捉え方がある。ここは今回の方法と接続する。Springer

ただ、何でも具体化すればよいのではなく、置く具体には狙いを持たせたい。

まず、「何を確かめるための具体か」をこちらが持つ

たとえば、相手の言う「自由」が、選択肢の多さなのか、許可の不要さなのか、まだわからないとする。

そこで、機能や雰囲気を盛り込んだ完成企画を出してしまうと、どこへの反応なのか判別しにくい。

代わりに、

「選択肢はたくさんあるけれど、始める前に毎回申請する場面を置いてみます」

という、特定の違いが見える場面を置く。

それに「違う」が出れば、次に、

「では、できることは少ないけれど、その範囲では断りなく始められる場面だと、何が変わりますか?」

と比べられる。

これは本人を二択に閉じ込めるためではない。「どちらも違う」「その区別ではない」も、重要な回答として残す。

仮置きした部分を、仮置きだとわかるようにする

返し方としては、

「あなたの話から、ここまではこう受け取りました。ここからの動きは私が仮に足しています。この場面だと、どこが近くて、どこが違いますか?」

が基本になる。

相手の構想からの帰結にも、条件からほぼ決まるものと、こちらが想定しただけのものがある。

たとえば「参加前に登録が必須なら、登録するまでは参加できない」は条件の帰結だけれど、「登録があると参加者は萎縮する」は反応についての仮説。

この二つを混ぜて、「あなたの構想なら必ずこうなります」と言わない。

必要な部分だけを具体化する

場に置くものは、図や文章でなくてもよい。

一往復の会話、最初の画面、ある人が入ってきてから帰るまでの短い場面、役割の配置、実物を使った試行でもいい。

選ぶ基準は、

「どの表現なら、今確かめたい違いを本人が判断できるか」

に置く。

言葉の違いなら実際の台詞を。順序の違いなら一連の動きを。距離感なら座り方や物の配置を。運用の違いなら、例外が起きたときの対応を出す。

完成度を上げることより、今回の問いに必要な具体性を満たし、それ以外は決めすぎないことを優先する。


4.相手の回答への掘り方・返し方

ここは反応ごとに技法を分けられると思う。例に挙げた問いを全部続けて聞くのではなく、相手の返答に応じて一つ選ぶ。

「それ!」「ここ!」と返ってきたとき。

すぐにまとめず、指しているところで止まる。

「いまの、どこですか?」

「その動きが起きたところ? 起きたあとに、関係が変わったところ?」

「言葉にしにくければ、その部分だけもう一度やってもらってもいいです」

対象が特定できたら、何を残す必要があるのかを確かめる。

「ほかが変わっても、ここが残っていれば近いですか?」

「逆に、全体が同じでも、ここだけなくなると違いますか?」

さらに、内容への反応なのか、この対話への反応なのかを見分ける必要がありそうなら、

「今の『それ』は、つくりたいものがそこにあった感じですか。伝えたかったことがようやく伝わった感じですか。別の感じでしょうか?」

と確かめる。

狙いは「正解を当てた」と確認することではない。どの部分の、どんな性質が一致したのかを、本人と共有できる状態にすること。

「違う」「なんか嫌だ」と返ってきたとき。

案を弁護しない。すぐ次の案を大量に出さない。

「一連のどこから、違う感じになりました?」

「そこまでは近かった、という部分はありますか?」

「いまの場面で、なくしたいものと、足りないものはありますか?」

そのうえで、

「私が足した『事前に役割を決める』が違うのかもしれないと思いました。そこを外してみると、変わりますか?」

と、自分の仮定を一つ動かす。

「違う」は、本人が正解を説明できることを意味しない。まずは違いが発生する位置をつかめれば前進として扱う。

「わからない」と返ってきたとき。

もっと深く聞く前に、何を判断すればよいかが見えているかを確かめる。

「いまの場面自体が想像しにくいですか。それとも、場面はわかるけれど、近いかどうかはまだわからないですか?」

場面が立ち上がっていないなら具体を変える。全体が大きすぎるなら一部分だけ取り出す。言葉にしづらいなら、選ぶ、並べる、指すという方法に変える。

「説明はまだ要らないので、引っかかるところがあれば、そこだけ指してみてもらえますか?」

それでもわからなければ、保留にする。「本人は知っているはず」という前提で追い込まない。

「そうですね」「理屈ではそう」と返ってきたとき。

同意を、像が捉えられた証拠にしない。

「今の説明は、筋が通るという感じですか。それとも、実際につくりたいものに近づいた感じがありますか?」

「このまま進めるとしたら、どこか直したくなりますか?」

ここで相手がこちらの言葉を使うだけなのか、自分から細部を訂正し始めるのかを、次の働きかけを選ぶ手がかりにする。

ただし、反応が小さいから何も起きていないとも決めない。あくまで本人の確認を優先する。

「それはいいけど、できない」と返ってきたとき。

望みの問題と、成立条件の問題を分ける。どちらも消さない。

「実現上の難しさとは別に、起きてほしいこととしては近いですか?」

「難しくしているのは、費用、時間、誰かの許可、ほかの条件のどこでしょう?」

「その制約を守ったままでも残せる部分は、どこですか?」

ここで「本当は怖いだけでは?」と心理的な問題へ持ち込まない。具体的な資源や権限の不足を、認識の問題に置き換えない。

前と矛盾することが返ってきたとき。

すぐに一貫した価値観へ整理しない。

「さっきの場面では『任せてほしい』で、今の場面では『一緒に決めてほしい』なんですね。何が違うのでしょう?」

人、時点、責任、失敗した場合の影響など、条件を比較する。

矛盾を解消することより、どの条件で判断が切り替わるかを見つけることを優先する。

5.場面が出揃ってきたときの俯瞰――共通テーマより、判断の分かれ目を見る

ここが特に重要だと思う。

過去の経験や想定場面が増えたときに、すぐ、「つまり、あなたは自律性を大切にしているんですね」とまとめると、それらしいが、その後の具体を選ぶ力があまり増えないことがある。

このモデルでは、俯瞰の目的を、きれいな概念にまとめることではなく、本人の判断が分かれる条件を探すことに置く。

場面を、比較できる粒度に揃える

一場面ずつ、最低限、次の内容が見えるように並べる。

どんな状況だったか/何が起きたか/本人が反応した箇所/本人の言葉/まだ不明なこと。

そして、「実際に確認できたこと」「本人の回想」「解釈」「想定」を区別しておく。

ここで揃えるのは、文章の長さではなく、場面の単位。片方が人生全体の感想で、もう片方が一秒のやり取りでは、そのまま比較しない。

似ているのに、反応が違う場面を並べる

たとえば、どちらも本人が自分で選んでいるのに、一方は「自由」で、もう一方は「やらされている」だとする。

「どちらも自分で選んでいるのに、こちらだけ違うのは、どの場面からですか?」

「選ぶ前に、誰かに何かを求められているところが違いますか。それとも、選んだあとの扱われ方でしょうか?」

こちらの仮説を出す場合も、候補として置く。

この比較では、同じ言葉で括っていたものの中から、別の条件を探す。

違う場面なのに、同じ感覚が出ているものを並べる

逆に、仕事の相談、誰かとの遊び、ものづくりの経験という異なる場面に、同じ「それ」が現れている場合。

「場面は違うけれど、三つとも『先に手が動いて、あとから役割ができる』ようにも見えます。この読み方は近いですか?」

「共通しているように見えるけれど、並べると違うところはありますか?」

ここでは、題材や分野を越えて残る、順序や関係の共通性を探る。

ただし、例外を無理に除外して、本人らしい物語をつくらない。

願っている帰結と、構想から出てくる帰結を並べる

これは、あなたの言う「構想に認知不協和が生まれる」にかなり近い操作だと思う。

「願っているのは『本人が自分から関わる』こと。一方、今の仕組みでは、運営者が先に役割を決めて渡すことになる。この二つを場面として並べると、どう見えますか?」

「矛盾してますよ」と指摘するのではなく、両方が具体として見えるようにする。

本人が「そこが違う」と言えば、修正箇所になる。「そこは両立する」と言えば、こちらが見落としている条件を聞く。

「両立するのは、どんなやり取りがある場合ですか?」

描かれていない人・時間・負担を見る

盛り上がる瞬間まで描けていても、その後が空いていることは、確認対象になる。

「その人が参加しない場合、どこにいられますか?」

「二回目に来たときにも、同じことが起きますか?」

「本人にとってのよい体験を、裏側で誰が支えていますか?」

「うまくいかなかったとき、誰が決め直せますか?」

これは現実性の審査だけではない。構想が、成功場面以外でも大事にしたいものを保てるかを確かめる問いでもある。

6.俯瞰したあと、どこにズームして何を聞くか

経験を時間の進みに沿って追うことと、ある瞬間に同時に起きている感覚・注意・意味を細かく調べることは、ミクロ現象学でも区別されている。microphenomenology

今回の方法なら、それに加えて「関係」と「条件」を動かす操作を組み合わせたい。

時間を細かくする――変化した瞬間の前後を聞く

「『やらされている』になる、ひとつ前はどうでした?」

「何が起きたところで、そうなりました?」

「そのあと、しようとしていたことは変わりましたか?」

「全体として嫌だった」を、一つの変化の連なりに戻す。

たとえば問題が「役割を渡されたこと」なのか、「役割を断れないとわかった瞬間」なのかで、次に置く具体は変わる。

同じ瞬間の中を分ける――物・行為・感覚・意味を区別する

「嬉しかったのは、その言葉を言われたことですか。それによって、自分の立ち位置が変わった感じですか?」

「『軽い』というのは、手間が少ないことですか。気持ちの感じでしょうか。別の意味ですか?」

ただし、最初から選択肢を並べすぎず、まず本人の表現を聞く。こちらの分類は、本人が指せないときの補助として使う。

関係の向きを見る――誰が、誰に、何を決めているか

「ここでは、誰が『始めてよい』を決めていますか?」

「その人は、誘いを断っても関係が変わらないとわかっていますか?」

「手伝う人と、手伝われる人は固定されていますか?」

同じ行為でも、許可、依頼、期待、評価の向きが違う場面をつくり、本人の反応を比べる。

一つだけ変える――何を残すと、同じ感覚が残るか

「台詞は同じで、言う人だけ変わったら?」

「同じ説明を、始める前ではなく、終わったあとに言ったら?」

「この仕組みは残して、評価だけなくしたら?」

ここで欲しいのは、正解の選択ではなく、何が変わったと本人が感じるか。

一度に全部変えないのは、どの違いに反応したかを追えるようにするため。

視点を変える――ただし、誰の想像かを明示する

二者間の関係やマーケティングでは、本人以外の視点も必要になる。

「この説明を初めて受け取る人は、何を知っている状態でしょう?」

「相手側から見ると何が起きているか、今わかっていることはどこまでですか?」

「それ以外の部分は、仮説として二通り置いてみましょうか」

相手の視点を想定することと、相手の内面を知ったことを混同しない。想定を精密にしても、それだけで顧客理解や関係分析が検証されたことにはしない。

7.一連の対話にすると、こういう感じ

以下は、方法を示すための架空の例。

本人の構想は「誰もが主体的に関わり、何かが生まれる場」。

本人:

「自由に参加できる、ものづくりの場をつくりたいんです」

コンサルタント:

「これまでの経験で、それに近かった場面はありますか?」

本人:

「知人の作業場で、誰かが棚を直していたときです。自分も気づいたら手伝っていた」

コンサルタント:

「『気づいたら手伝っていた』のところを、少し前から追えますか?」

本人:

「板がぐらついていて、押さえたんです。そしたら、そのまま一緒に作業していた」

コンサルタント:

「板がぐらついているのを見て、押さえて、そのまま一緒に作業していた。その中で、つくりたい場に近いのは、どこでしょう?」

本人:

「参加しようと決めていないのに、もう参加しているところかな」

ここで、すぐ「参加のハードルを下げたいんですね」とまとめない。「参加を決める」と「関わり始める」の順序を、仮の着眼点として持つ。

次に、構想を具体として置く。

コンサルタント:

「では、受付で得意なことを書いて、やってみたい作業を自由に選べる場面を置くと、近いですか?」

本人:

「いや、それだと、作業する人を集めている感じになる」

コンサルタント:

「どこから、その感じになりますか?」

本人:

「最初に『何ができる人なのか』を出さなきゃいけないところ」

ここでは、「自由に選べる」が十分条件ではないとわかる。得意不得意や役割を、関わる前に示すことが引っかかっている。

コンサルタント:

「では、先に役割を聞かず、途中のものが見えていて、それに手を出せる場面を置きます。その場合はどうでしょう?」

本人:

「それ! やりたいことを聞かれる前に、先に手が出る感じ」

コンサルタント:

「『先に手が出る』ですね。手を出したあと、そこで名前や役割を登録してもらうと、どうなりますか?」

本人:

「それも違う。手伝ったら、参加者として扱われ続けるのは嫌だ」

ここで、最初の「それ!」が、まだ全体の確定ではなかったことがわかる。

コンサルタント:

「始める前に役割を決めなくてよいだけでなく、一度手を出したあとも、役割に固定されないことが大事なんですね。この受け取り方は合っていますか?」

本人:

「そう。それに、手を出さずに見ているだけでもいい」

ここまで来て、俯瞰する。

「参加の選択肢を増やす」という方向より、参加する/しないを先に宣言させず、行為が起きても、それを固定的な役割に変えないことが、この構想の判断条件として見えてくる。

さらに、実際の設計へ戻す。

コンサルタント:

「では、安全のために伝える必要があることと、参加者として登録してもらうことは、分けて考えたいですね。何を先に伝えれば、見ているだけの人も、手を出す人も困らないでしょう?」

この一連で、コンサルタントが渡したのは「正しいコンセプト」ではない。

本人が自分の構想を判別できる場面を順に置き、その判断が指す条件を細かくしている。


8.体系化するなら、「質問集」より「次の一手の選び方」を残す

あなたが言っていた「自己体験の回数が多い人だけ、再現性が上がるのかもしれない」という仮説に対応するなら、体系化すべきなのは、上手な質問の文例だけではないと思う。

何を見て、その問いや具体を選んだのかのほうが重要。

暗黙的な熟練の知識を、具体的な業務場面に即した面接で引き出す認知的タスク分析という方法にも蓄積がある。「まったく体系化されていない」とするより、その蓄積を使いつつ、今回の支援者側の操作を明示する、という位置づけがよさそう。the University of Bath's research portal

この実践を検討する単位としては、たとえば、

拾った手がかり → 持った仮説 → 場に置いた具体/問い → 本人の反応 → 仮説をどう修正したか

という一往復を使う。

先ほどの例なら、

「気づいたら手伝っていた」

→ 参加の意思決定より先に行為があることが大事なのかもしれない

→ 事前に作業を選ぶ場面を置く

→ 「何ができる人かを先に出すのが違う」

→ 単なる順序だけでなく、役割の提示・固定も検討する

という形になる。

この単位で比較すれば、「なぜその質問をしたのか」「別の具体を置いたら何が確かめられたか」を検討できる。

そして、うまくいったかどうかも、「本人が感動した」「よいまとめができた」だけでなく、本人が新しい場面にも自分で判断を適用できるようになったかで確かめたい。

「ここは残す」「この条件だと違う」「この例は、まだ判断できない」と、支援者が言わなくても区別できるようになっているか。

同時に、守るべき線もある

こちらの仮説に合う反応だけを拾わない。沈黙や表情を、本人より先に意味づけない。思い出せないことを答えさせない。「それ!」を出させること自体を目的にしない。

ミクロ現象学の方法論でも、質問によって答えを誘導した可能性や、本人の不確かさを扱う必要が明示されている。Springer

また、見えてきたものが「前からあった感覚」なのか、「今この具体に触れて、新しく生まれた望み」なのかは、無理に前者に揃えなくてよい。

「これは、もともと感じていたことに近いですか。それとも、今見て初めて、こうしたいと思った感じですか?」

どちらでも創造は進みうる。ただ、起きたことの説明は分けておきたい。


全体をまとめると、この方法でいう「深く掘る」は、必ずしも抽象的な根本理由へ向かうことではない。

時間を細かくし、誰の視点かを分け、関係の向きを確かめ、条件を一つ変え、本人が指し示せるところまで具体の解像度を上げること。

そして俯瞰は、その具体を捨てて上位概念にすることではなく、複数の具体を並べて、何が変わると本人の判断が変わるのかを見ること。

コンサルタント側の技量の中心は、

「相手の本当の答えを言い当てること」ではなく、「次に何を場に置けば、本人が自分で、もう一段細かく見分けられるかを選ぶこと」

にある、というのが、今の話から僕が組み立てられる仮説。