この知恵で考えられること
人・生き物・情報・資源・時間・認知の関係を組み替え、起こりにくかった現実を成立させるための再利用可能な方法。
現実を扱う技術。身の回りにある、みんなでもっと使い込むべき技術たち。
人・生き物・情報・資源・時間・認知の関係を組み替え、起こりにくかった現実を成立させるための再利用可能な方法。
人類や生命が長い時間をかけて獲得してきた、利用価値が高く、今なお活用余地の大きい現実操作の技術群。
生き物が自生する
遺伝
概要
構造・性質・可能性を、個体の寿命を越えて次へ渡す。
どう偉大か
毎回ゼロから始めず、過去の蓄積を次の存在の初期条件にできる。
代謝
概要
外部の物質やエネルギーを取り込み、自分を維持・修復・成長させる形へ変える。
どう偉大か
環境から受け取るだけでなく、異物を自分の一部や活動へ変換し続けられる。
恒常性
概要
環境が変化しても、内部状態を一定の範囲に保ち続ける。
どう偉大か
変化へ適応しながら、自分を壊さず活動を続けられる。
分業
概要
小さな部品・成果・機能を、他のものと再結合できるようにする。
どう偉大か
一人で完成品をつくらなくても、部分的な創造を後から大きな現実へ合成できる。
膜・半透膜
概要
内側と外側を分けながら、物質・情報・エネルギーの出入りを選択的に制御する。
どう偉大か
環境と完全に切り離されず、必要なものだけを取り込み、不要なものを排出しながら、独立した個体や状態を成立させられる。
持続構造を自生する
複利
概要
生まれた成果を再投入し、次の成果を生む力そのものを増やす。
どう偉大か
一度の成果を消費せず、時間とともに加速する流れへ変えられる。
ビジネスモデル
概要
価値の創出・提供・対価回収・再投資の流れをつなぎ、活動が継続できる循環を設計する。
どう偉大か
一度きりの善意や労力に依存せず、価値を生むほど次の価値創出条件が整う構造をつくれる。
ネットワークエフェクト
概要
参加者や接続が増えるほど、仕組みを利用する価値も高まる。
どう偉大か
使われるほど消耗するのではなく、使われるほど全体が豊かになる構造をつくれる。
保険・リスクプーリング
概要
多数の主体が小さな負担を持ち寄り、個体には耐えられない大きな損失を集団で吸収する。
どう偉大か
誰に起こるか分からない危険を全員で分散することで、失敗や事故が一度で個体や活動を終わらせることを防げる。
接続/交換の経路をつくる
量化
概要
現象や関係を、計算・比較・予測・検証可能な構造へ変える。
どう偉大か
複雑な世界を、人間が操作・設計・検証できる対象にした。
変換
概要
価値・情報・時間・エネルギー・構造を別の形へ変え、別の主体・場所・目的でも扱えるようにする。
どう偉大か
そのままでは届かない、使えない、交換できない現実を、別の場所で機能する姿へ移せる。
IT
概要
情報を高速・大量・低コストで保存・複製・通信・検索・実行する。
どう偉大か
情報の限界費用を限りなくゼロに近づけ、距離や人数を越えて同じ仕組みを働かせられるようにした。
貨幣
概要
価値を共通単位へ変換し、保存・交換・移転可能にする。
どう偉大か
欲しいものが直接一致しない相手とも、時間・場所・相手を越えて協力できるようにした。
電気
概要
エネルギーを遠くへ運び、分配し、変換し、細かく制御できる形にする。
どう偉大か
光・熱・運動・音・通信・計算など、異なるエネルギー利用を一つの共通基盤で扱えるようにした。
接続/交換の障壁を無くす
プロトコルレス化
概要
利用者が相手の形式や操作方法を覚えなくても、意味内容を元に自動変換され接続できるようにする。
どう偉大か
人間同士の言語、機械や制度へ合わせる負担を減らし、異なる主体同士を直接つなげる。
コマンド化/プロトコル化
概要
複雑な意図や行動を、短い言葉・記号・ボタン・身振りへ圧縮する。
どう偉大か
言語・種族・専門性が異なっていても、少数の共有信号で協力できる。
マイクロアドレッシング
概要
人・場所・物・情報・機能に、他と区別して指定できる識別子や所在地を与える。
どう偉大か
誰に、どこへ、何へ届けるのかを正確に指定できるようにし、大規模で複雑なネットワークの中でも接続と配送を成立させられる。
規格化
概要
形状・単位・品質・手順・データ形式などを共通の仕様へ揃える。
どう偉大か
個別に調整や確認をしなくても、異なる人・組織・製品・仕組みを交換可能な部品として接続できる。
資源を最大活用する
互恵
概要
提供と受益を循環させ、互いに利益のある関係を認識でき持続させる。
どう偉大か
自己犠牲にも、その場限りの等価交換にも依存しない協力をつくれる。
アグリゲーション
概要
分散した資金・物・設備・時間・知識を、一つの資源群として扱う。
どう偉大か
単独では小さすぎる余剰を、何かを実現できる規模へ変えられる。
アービトラージ
概要
場所・時間・価格・情報・認知・主観的価値の差を、移動や交換によって価値へ変える。
どう偉大か
新しく何かを発明しなくても、余っているものを必要な場所へ動かすだけで現実を改善できる。
イヤーマーキング
概要
お金や資源に、用途・行き先・期限・対象などの文脈をあらかじめ結びつける。
どう偉大か
自由度を少し絞ることで安心して渡せるようになり、資源の意味と流れを強くできる。
クラウドソーシング
概要
多数の人が持つ小さな時間・知識・能力を、一つの仕事へ接続する。
どう偉大か
一人や一組織では保有できない能力を、分散したまま利用できる。
キャッシュアルゴリズム
概要
繰り返し必要になる情報や資源を、利用地点の近くに一時保存し、再取得や再計算を減らす。
どう偉大か
同じものを毎回ゼロから用意せず、過去の取得や計算結果を再利用することで、時間・通信・エネルギー・処理能力を大幅に節約できる。
個体の権利を拡張する
法人格
概要
人・資産・権利・責任・目的を、生身の個人とは別の主体へまとめる。
どう偉大か
個人の寿命や事情を越えて、目的を持ち続ける存在を社会につくれる。
需要集約
概要
個々の「欲しい」を束ね、大きな購買単位や交渉力へ変える。
どう偉大か
一人では得られない価格・品質・供給条件を、集団として獲得できる。
時間的デカップリング
概要
同時である必要のない行為や手続きを、異なる時間へ切り離す。
どう偉大か
時間をずらすだけで、参加・協力・利用の成立条件を大きく軽くできる。
ファクタリング
概要
未来に受け取る価値を割り引き、現在利用できる資源へ変える。
どう偉大か
価値が生まれる時点と、資源が必要な時点のずれを埋められる。
第三者信用による信用連鎖
概要
直接には信用関係のない主体同士を、双方が信用する第三者の保証・認証・評判を介して接続する。
どう偉大か
すべての相手と一から信頼関係を築かなくても、既存の信用を受け渡すことで、未知の相手との取引・協力・参加を成立させられる。
淘汰圧を有効活用する
サイバネティクス
概要
状態を観測し、目標との差を捉え、フィードバックによって修正を続ける。
どう偉大か
最初から正解を知っていなくても、動きながら望ましい状態へ近づける。
進化的選択アルゴリズム
概要
複数の変異を現実に出し、評価され、生き残ったものを次へつなぐ。
どう偉大か
人間が正解を決め切らず、現実そのものを評価者として使える。
ガルトンボードによる正規分布
概要
初期条件と分岐構造だけを定め、個々を制御せずに全体の分布を生み出す。
どう偉大か
個々の選択を管理しなくても、経路の数そのものによって全体の傾向を設計できる。
認知能力を拡張する
記録する
概要
現実や経験を、人の頭の外へ保存し、時間・個人・世代を越えて再利用可能にする。
どう偉大か
知識・文化・経験・歴史を蓄積できるようになり、人類が毎回ゼロから始めなくなった。
可視化する
概要
状態・関係・差・変化など、直接は見えないものに知覚可能な形を与える。
どう偉大か
存在していても扱えなかった現実を、判断と行動の対象に変える。
単位化
概要
連続していて扱いにくい時間・活動・成長を、認識可能なまとまりへ分ける。
どう偉大か
終わりのない現実に、開始・完了・節目・再開を発生させられる。
表象化
概要
そのままでは認知まで届かない出来事や影響を、名前・儀式・言葉・画像・物語・数字・象徴として表す。
どう偉大か
確かに起きていたのに消えてしまう経験を、「起きた現実」として本人や社会へ届けられる。
HUD
概要
行動を止めず、前を向いたまま、現在地・状態・次の判断材料を見せる。
どう偉大か
現実から離れて確認するのではなく、行動している現実の中に情報を重ねられる。
行動能力を拡張する
オンボーディング
概要
新しい参加者が、操作・役割・関係・文化を理解し、実際に動けるまでの合流過程を整える。
どう偉大か
価値ある世界をつくるだけでなく、他者がその世界へ本当に入れる入口をつくれる。
アフォーダンス
概要
環境や形そのものによって、何ができるか、どう扱えるかを知覚させる。
どう偉大か
説明を読ませなくても、環境との接触から自然に行動を立ち上げられる。
集合的沸騰
概要
一つの生き物の表情・動き・姿勢・熱を起点に、周囲の感情と行動を同調させる。
どう偉大か
説明や報酬がなくても、個体のドライブ感を集団の運動へ変えられる。
満足遅延
概要
現在の小さな満足を待ち、未来のより大きな価値を選ぶ。
どう偉大か
目先の快楽だけでは成立しない学習・育成・蓄積・創造を可能にする。
レベルデザイン
概要
難易度・情報量・自由度・成功可能性を、進行に沿って配置する。
どう偉大か
「まだできない」と「できる」の間に、挑戦可能な道筋をつくれる。
ゲーミフィケーション
概要
行為を、挑戦・進捗・探索・達成・収集として認識できるようにする。
どう偉大か
義務や作業だったものを、自発的に関わり続けられる経験へ変える。
知覚的痛みの緩和
概要
選択肢・手順・タイミング・負担の知覚を設計し、実利を変えずに人の行動を変える。
どう偉大か
現実そのものを変えなくても、選ばれ方・続けられ方・参加され方を大きく変えられる。
活用余地が大きい技術
現代でも十分に利用されているが、本来持つ可能性に対して、まだ十分に活用されていない技術。
本来の用途より狭く使われている
発明自体は広く普及しているが、「何のための技術なのか」が狭く解釈され、本来応用できる領域まで使われていない。
- 貨幣
- 代謝
- 恒常性
- イヤーマーキング
- 時間的デカップリング
- 表象化
他分野への転用がまだ少ない
特定分野では当たり前に使われているが、その設計原理が他の分野へ十分持ち込まれていない。
- HUD(ゲーム→仕事・教育・経営)
- コンポーザビリティ(ソフトウェア→組織・創作・制度)
- 進化的選択アルゴリズム(AI・生物→経営・政策・教育)
- 膜・半透膜(生物→コミュニティ・組織・AI)
- キャッシュアルゴリズム(コンピュータ→物流・知識・教育)
社会実装がまだ始まったばかり
技術としての有効性は高いものの、制度・文化・インフラが追いついておらず、普及余地が大きい。
- クラウドソーシング
- コンポーザビリティ
- 第三者信用による信用連鎖
- 規格化(未標準領域)
- マイクロアドレッシング(実世界・デジタル統合)
個別解説
代謝
生物は、外部のものを取り込み、自分の一部や活動へ変えながら成長する。
しかし、人や組織では「完成した資源を使う」という発想が中心で、不完全な素材・失敗・他者・副産物を取り込み、新しい価値へ変換するという代謝的な設計はまだ十分に活用されていない。
また、一人一人の経済圏として自分の力や知恵だけで稼いでいくことには限界がきている。
自然が代謝により成長し価値化するような事業や仕事も併存する生き方に拡張し始めると思う。
貨幣
貨幣は、買い物のための道具に閉じない。
交換・協力・投資・信用・意思・責任を時間や場所を越えて運ぶための共通基盤。
その割には、漠として価値が金額になっており、スキルや行動での協力はできないとしても貨幣を通じた協力はもっと活性化できる。
イヤーマーキング
汎用性を少し下げるだけで、止まっていた資源が動き始めることがある。
用途・対象・期限をあらかじめ結びつけることで、「渡したいが渡せない」資源はまだまだ驚くほど減らせると思う。
時間的デカップリング
問題の多くは、内容を変えなくても、タイミングを変えるだけで解ける。
同期を外す、入力を後ろへ回す、判断を後日にする。それだけで参加できる人、利用できる人、続けられる仕組みは大きく増える。
表象化
起きた出来事も、表現されなければ本人や社会の認知へ届かない。
名前・儀式・物語・数字・象徴を与えるだけで、消えていた変化や個々の関係が実感でき、共有可能な現実になる。
その手段としてSNSは機能出来ていない。
恒常性
成長や変化ばかりが評価されるが、壊れずに続けられること自体が高度な技術である。
個人・組織・生態系が長く活動するには、拡大より先に、状態を保ち、回復できる構造が必要になる。
HUD
ゲームでは当たり前になった「前を向いたまま状態を把握する」設計は、現実世界ではまだ十分に使われていない。
ハッドの凄いところは、何かに取り組んでいる最中に情報やスコアが視界に入ること。
仕事・健康・教育・経営でも、現実から目を離さず現在地を把握できれば、人はもっと自律的に行動できる。
コンポーザビリティ
創造を完成品ではなく、部品や続きをつくる行為として扱える世界は、まだ始まったばかりである。
小さな創造でも、他者の創造と組み合わされれば、一人では到達できない大きな現実を生み出せる。
進化的選択アルゴリズム
考え抜いて一つの正解を選ぶより、複数の案を現実へ出し、現実に選ばせた方が強い領域は多い。
AI・生物・スタートアップでは一般的になりつつあるが、教育・行政・組織運営ではまだ活用余地が大きい。
TIKTOKはこのメカニズムを本気で取り組んだ1社である。
コンセプトさえ出来れば20の形態やインターフェースを同時にリリースしながら最適解へと1年以内に辿り着き始める。
膜・半透膜
生命は、何でも受け入れることで生きているのではない。
内と外を分け、必要なものだけを通す境界を持つことで、自分を維持しながら外界と関わっている。
多様性を神格化しすぎず、良い膜をデザインすることで共存は不平不満なく進化する。
組織・コミュニティ・AI・制度にも、「つながる技術」だけでなく「適切に遮る技術」がまだ十分に設計されていない。
キャッシュアルゴリズム
一度得たものを、必要な場所の近くへ保持するだけで、繰り返し発生する負荷を大きく減らせる。
コンピュータでは当たり前の考え方だが、知識・物流・教育・組織運営では、まだ毎回ゼロからやり直していることが多い。
個々人にとっての快適さを仕組みの力で支えつつもリソースを過剰消費しない技術として可能性がまだまだある。
クラウドソーシング
分散した人の時間・能力・知識には、まだ見つかっていない強力な組み合わせが大量にある。
専門性ではなく、その界隈の当事者であればパッと見ただけでわかることも、そこに属していない身ではAIを使っても掴みきれないことが多々ある。
(マッチング予定の相手へのネガティブチェックなどはきっと同世代がインスタを覗ければおよその性質への予測やアドバイスができる。)
第三者信用による信用連鎖
社会の多くは、「信用されている誰か」を経由して成立している。
第三者の範疇がまだまだマクロ的すぎることが多い。
その人の活動は応援できなくても、それを支援している個人の活動の範囲なら協力できることもたくさんあると思う。
規格化
共通仕様は、交換可能性を生み出す最も強力な技術の一つである。
物理・情報・制度・契約など、まだ標準化されていない領域は多く、規格が生まれるだけで市場や協力関係が一気に広がることがある。
マイクロアドレッシング
人・場所・物・情報に「どこなのか」を与えるだけで、探索・配送・接続・協力は劇的に容易になる。
物理的な話ばかりではなく、どんな経験を通っているのかなどをディストピアにならない範囲で位置情報のように掴めると、今その人にとって不可欠な先輩がわかるはず。
現実世界の多くはまだ曖昧なままであり、あらゆる存在へ適切なアドレスを与えることには、まだ大きな可能性が残されている。