この知恵で考えられること
育成がうまくいかない、教育が機能しないと感じることは多くの組織で起きています。
育成がうまくいかない、教育が機能しないと感じることは多くの組織で起きています。
これまで「言語化能力の不足」や「知識伝達の問題」など個人や手法の問題として捉えられてきましたが、より根底にはたしかに別の本質的な理由が存在します。最近の理解のアップデートを踏まえ、育成が出来ない現象を改めて読み解き言語化してみます。
前提1. 「仕事」とは何か?
育成が上手くいかない現象の理解には、まず「仕事」の本質的理解が欠かせません。整理すると、
- 仕事とは、その人が置かれている「ビジネスモデル」に依存して決まる。
この「ビジネスモデル」は、物理学でいう自然法則のように、その社会で仕事の性質や量を定める根本的ルールのようなものです。ここでいうビジネスモデルは、「事業継続のためのロジック」という訳ではなく、報酬の源泉と評価方法を抽象化したものと捉えてください。
つまり仕事とは、
-
報酬の出所
会社から給料をもらう、靴磨きなら磨いた靴の持ち主から報酬を得る、達成感や成長も報酬になる場合もあります。
-
報酬の決定方法
評価制度や成果指標などが該当し、何に対してどのように報酬が決まるのか。
この2要素を背景に仕事の内容や成果基準が決まります。
前提2. 仕事ができるとはどういうことか?
スキルや知識の発揮の仕方は大別すると以下3パターンに集約されます。
-
プロセスやアウトプットを「真似る」ことで仕事を成し遂げる
最も基礎的なパターン。具体的なやり方や手順を再現すること。
-
既存のノウハウやロジック、アイデアを「応用」することで仕事を成し遂げる
従来あるものを状況に合わせて活用する。
-
ノウハウやロジック、アイデアそのものを「新たに構築」することで仕事を成し遂げる
根本的な仕組みやアイデアを創造する高度な形態。
どの形態が高次かは一概には言えず、業務の性質や条件によっては「1」が「3」よりも難易度が高い場合もあります。
前提3. 育成が必要なシーンとは?
この3パターンに照らせば、育成が必要となるのは特に、
- 「1」のプロセス模倣が本人だけでは成立しないとき。
つまり、仕事のやり方を真似できる状態に持っていくことが教育の本質的役割となります。もちろん「2」「3」の応用や創造力の育成も存在しますが、現実として教育可能で効果的なのは「1」の領域に限定されることが多いのです。
では、「育成が出来ない」とはどういうことか?
ここまでの整理を踏まえ、育成ができない現象を読み解くと、
1. ビジネスモデルがズレている
育成とは簡単に言えば、
- 教育者が本人の置かれているビジネスモデルに合致した具体的プロセスやアウトプットを示し、
- 対象者がそれを習得し実行できるようになること
です。
しかし、
- 対象者のビジネスモデルと教育者の示す内容が合致しなければ、
- あるいは教育者自身がそのビジネスモデルに沿った仕事ができていなければ、
育成は失敗に終わります。
具体例
- 営業プロフェッショナルが新人教育に苦慮するのは、自身の営業モデルや成果基準と新人のそれが違うため。
- マネジメント研修が成果を出せないのも、理論やフレームワークと現場実態の乖離が大きい場合があるため。
意訳すると
言い換えれば、
- 「あるビジネスモデルに沿った仕事を成し遂げられない人は、そのビジネスモデルに基づく育成ができない」
ということです。
ビジネスモデルにズレがあっても見よう見まねで成立する浅い教育は一定程度可能ですが、本質的な育成ではありません。深みが無いため価値が低く、中長期的に意味をなさない場合がほとんどです。
まとめ:
育成を成功させるために必要な理解
- 仕事は報酬の出所と評価方法を定める「ビジネスモデル」に依存して本質が決まる
- 仕事ができるとは「真似る」「応用する」「構築する」のいずれかの形態である
- 育成が必要なのは「真似る」能力の伝達だが、それはビジネスモデルへの適合が前提となる
- 教育者と被育成者のビジネスモデルが同じでなければ本質的な育成は成立しない
- 表面的な言葉や手法の問題ではなく、根本はビジネスモデルの理解共有・整合にある
最後に
この視点は育成設計や教育取り組みの方向性を見直す大きなヒントになります。従来の言語化能力の鍛錬やコーチング手法の補完として、ビジネスモデルのズレ解消が育成改善の鍵であると捉え直すことが重要です。
組織においては、教育者のビジネスモデルの把握・昇華を推進し、一致した価値基準のもとで研修プログラムやOJT設計を行うことが成功率を劇的に高めるでしょう。